野火止用水の水は、現在、どこから流れているのか?
この疑問を解きに来てぶつかったのが、西武新宿線玉川上水駅南口を降りて間もなくの「上水小橋」に集まる数人のハイカーの声高の会話です。
「上水小橋」からの玉川上水
昔のままの素掘りに音を立てて水が流れています。
「ここから先、流れてる水は多摩川からの水じゃないって、説明されたけど・・・?」
「そんなことあないよ、羽村の堰からの多摩川の水さ。今は水槽になっちまったけんど、そこに取り入れ口があってよ、ちゃんと石垣が積まれていて、間違いなくそこから流れていた」
地元の方の話は具体的です。そして説明役
「確かにそうでした、昭和48年頃までは・・・。でも、今は違うんです」
と云っても
「いや、とんでもない、この裏で、岩の間から羽村からの水が吹き出してるぜ。」
どうも、ここに、仕掛けがありそうです。
「ほんとだ、水が湧いている」
「大きい鯉もいるし」
わいわい、なかなか納得されません。その種明かしです。
上水小橋から、東京都水道局小平監視所まで登ります。建物の壁に説明板が掛けられています。
沈砂池から砂川線、小平分水(新堀用水)が地下に潜る
沈砂池から砂川線で東村山浄水場、小平分水(新堀用水)へと大小の管に分かれて、玉川上水で運ばれてきた多摩川の原水は全部地下に潜らせて運ばれています。これでは、下流の玉川上水へは流れません。現に見てきた水はどこから来ているのでしょう。もう一つの案内板があります。
清流の復活記念碑
昭和61年(1986)8月 東京都知事鈴木俊一
と揮毫されています。
その横に東京都環境局自然環境部の案内板があります。
東京都環境局自然環境部 清流の復活案内板一部拡大
昭島市にある多摩川上流処理場から朱書きの現在地=小平監視所まで、点線で送水管が記されています。高次処理された処理水の送水管の経路です。小平監視所の職員さんに聞くと、監視所と先に紹介した岩からの湧き口の間に栓があって、送られてきた処理水が、玉川上水と野火止用水に流されているのだそうです。
これが、一度涸れた小平監視所から下流の玉川上水に清流が復活した仕組みでした。野火止用水も同じです。こちらは玉川上水よりも早く、昭和59年(1984)に清流の復活がされました。
昭和40年代末に玉川上水も野火止用水も水が流れなくなり、堀は埋まり始め、汚水が流れ込み、まさに破壊寸前でした。その時の荒れた姿を思うと涙が出てきます。清流復活に多大な努力を傾けられた方々に感謝です。